僕の左手首には4本の傷跡がある。

左手甲には無数に交差する傷跡がある。


何れも自分で過去に残した物。



最近頓に思う。

正統でない烙印以外の何物でもないと。



バイト時に時計を忘れると非常に落ち着かない。

時間が分からないからじゃない。

レジで釣銭渡す時に手首の傷が覗くからだ。



手甲は疲れるか、身体が火照るかすると薄っすら浮かんでくる程度だから

大して気にならないんだけど。







冬は乾燥するから

ガラスのコップに水を入れて部屋に置いていた。


春になって風の強い日に

カーテンに薙ぎ払われて割れてしまったそれを

何故だか僕は勉強机の1番下の引き出しに隠した。

どうしてだか人に見つかってはいけないと思ったらしい。







暫くして

何を思ったか透明のマニキュアを接着剤にして

ガラスのコップを修復しようとした。

そうしなければいけないから。

最後の1ピースを

くっ付けずにベッドの小さな引き出しにしまう。

鋭く薄く綺麗に割れたその美しさに負けたのだ。

所詮僕は物体の美しさに勝てない生物で。







来る日も襲う熱と脱力感から開放されたい一心で

手首に美しいものを醜い自分に突き立てる。

出来た傷に至高の芸術性を見出して制することは皆無。







刹那の幻だということに気づいていた。

救われやしないのに。







ただ、





傷を消したい等とは一切思わない自分が1番疎ましい。

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